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福岡高等裁判所 昭和24年(つ)1115号 判決

被告人

有田恭哉

主文

原判決中被告人関係部分を破棄する。

本件を福岡地方裁判所小倉支部に差戻す。

理由

なお職権を以つて調査するに原判決は判示贈賄者谷畑春雄から金一万五千円、同岡崎ウメノから金五千円、同森田ハルヱから金一万三千円、同吉田鉄雄から金五千円、同川越チカ子から金五千円を又被告人から金一万三千八十二円を夫々追徴する云渡しをしておるが、被告人が夫々前記贈賄者谷畑春雄外四名から賄賂として收受した現金を收受後費消もせず又自己固有の金錢その他の金錢とも混同せずに、元のままで前記各贈賄者に返戻したのであればその返戻金を贈賄者から沒收し、沒收不能のときは追徴すべきであるが、被告人が賄賂として收受した現金を費消するか、他の金錢と混同した後はたとえ收受金額と同額を他の金錢を以て返戻するも依然被告人から追徴すべきである。然るに本件訴訟記録全般を檢討するも、叙上何れの場合であるかが分明せず更にこの点の審理を俟たなければ果して原判決が贈賄者等に対し前記のような追徴の云渡しをしたことが正当であるのか不正当であるのか判定することができない。結局原判決には審理不盡の違法があり、この違法は判決に影響すること勿論であるから、この点においても原判決は破棄を免れない。

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